『チ。』は実は異世界ラノベなんかより遥かにタチが悪いです。...

あそこで描かれた、「地動説を弾圧する教会」という構図は実際にはほとんど起こらなかった事で、19世紀に「発明」された歴史観です。
20世紀の後半から半世紀以上をかけて歴史家や科学史家が否定、修正し続けていますが、ほぼ無批判になぞって、しかもリアルな歴史のような顔でやっていて、かなり罪が深い。

私はあれがどう受け止められたか興味があって、アニメ終了後に複数人(4人)と話してみましたが、正しく理解していた人は一人もいませんでした。
原作はともかく、あれをアニメ化したNHKはかなり罪深いと思っている。

私が話した人は(うろ覚えだけど)3人がアニメのみ観ていて、1人はアニメで興味を持って原作を読み始めた所だった。(その人には最後に大事な種明かしがあるから必ず最後まで読んでと言っておいた)
思うのは、あれだけ弾圧のストーリーをやっておいて、最後でちょこっとひっくり返しても、ほとんどの人は(特にアニメで観る人は)そちらしか印象に残らないんだな、ということ。
あと、私はああいうトリックのネタとしてわざわざホイッグ史観を描く事を選んだ作者のセンスが非常に嫌いです。
途中で出て来る周転円の説明を見ても、作者がきちんと宇宙観の変遷の歴史を理解しているのは疑いようがなく、その上であのストーリーを作ったセンスに非常に嫌悪感がある。(これは完全に個人的な感想。あと、拷問描写の差し込み方の安易さとかも嫌い)
中世ヨーロッパにおける「地球中心説」の宇宙観は、単に宇宙のシステムだけの話でなく、キリスト教的な世界の理解と結び付いた「世界観」を形成していて、そこでは地球が宇宙の中心に不動である事が非常に重要な意味を持っているのだけど、それを「天動説」としてしまうと、その辺が全くわからなくなるんだよね。
そもそもコペルニクスの地動説はコペルニクス当時の教皇クレメンス7世に伝わっていて、教皇自身が興味を示しており、その下にいた枢機卿シェーンベルクが賞賛する手紙をコペルニクスに送っている上、『天球の回転について』はその次の教皇パウルス3世に献呈されていて、教皇庁はむしろそれなりに好意的ですらあったんですよ。
雑な言い方をすると、教会は「神」が作ったこの世界の真理を解き明かす事自体には基本的に肯定的で、その点でコペルニクスが知られてなかった真理を発見したかも知れないという事は好意的に受け止めているんです。
ただ、初期の時点では、地動説が天動説とがっちり組み合わさった旧来のキリスト教的世界観を根本的に脅かす可能性にはまだ気付いてなかったとも考えられ、その認識が教会内にある程度広がったのがガリレオの頃とも言えます。(あと教会内も一枚岩ではなく、ガリレオを擁護する人もいました)
何れにせよ、『チ。』(のどんでん返し以前)で描かれたような、教会による単純な図式の弾圧は完全に前時代的な認識です。
あと、老婆心ですが、AIは調べ物には全く役に立たないですよ。あれは基本的に質問者におもねる傾向がはっきりとあり、聞き方次第で回答がかなり変わります。
自分がした質問内容を肯定するような回答が出た時ほど用心した方がいいです。
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