とはいえ、それだけだと味気ないので、もう少しだけ背景を説明します。
「分からない」というのは、単に未解決というより、「現在の宇宙論の枠組みでは、その問い自体を物理として定式化できない」という意味です。宇宙論で扱う「宇宙」とは、銀河や物質が入っている箱としての空間だけではなく、距離・時間・因果関係そのものを定義する時空全体を指します。この意味では、一般相対論に基づく標準的な宇宙論では「宇宙の外側」という概念自体が定義されません。
これはあくまで比喩ですが、風船の表面に住む二次元の存在が「外側」を内部の言葉だけで記述できない、という話に似ています。外側を語ろうとすると、内部だけで完結した枠組みを超える必要が出てきます。
一方で、理論を拡張すると話は少し変わります。インフレーション理論では初期宇宙で急激な膨張が起きたと考えますが、その膨張が一様に終わらなかった場合、我々の宇宙は無数に生まれる「泡宇宙」の一つにすぎない、というマルチバースの描像が自然に現れます。この場合、確かに「宇宙の外側」を数学的に定義することはできます。しかし重要なのは、多くのマルチバースモデルでは外側が我々の可観測宇宙と因果的に切り離されているため、現在の理論と観測の枠内では直接検証する方法が知られていないという点です。外側の存在を間接的に検証しようとする試みも理論的には提案されていますが、現時点では決定的な証拠は得られていません。
宇宙論は、宇宙の理解を広げる学問であると同時に、「何を取り扱えて、何を取り扱えないか」という線を引く学問でもあります。「宇宙の外側」が存在するかどうかは、現時点では科学的に肯定も否定もできません。だからこそ誠実な態度は「ある」「ない」と断言することではなく、「どこまでが科学として語れる範囲なのか」を示すことにあります。
「分からない」と言える地点こそが、現代宇宙論の限界、あるいは到達点とも言えます。
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