多分、「人文系学問が無意味」と言う人は、
知識の成り立ちを含め、世界のありようについて、あまりご存知でないのだと思います。
長くなりますがスレッドで説明してみます。
#マシュマロを投げ合おう
marshmallow-qa.com/messages/f212d…

知識の成り立ちは後回しにし、ここではまず、役に立つ/立たないについて、①短期的・金銭的効用、②長期的・制度的効用、③価値‐規範的・存在論的効用の順番でご説明しましょう。これは「人文系学問が無意味」と言う人にも分かりやすいものから、という順です。
①短期的・金銭的効用:人文系産業のシェアと成長率は高い
まず人文系は普通に儲かります。自称「意識の高い」人たちの言い方を借りれば「市場が評価」しています。
世界経済で見ると、文化・クリエイティブ産業の経済規模は約 3.3 兆ドル、3.1 %のシェアを占めます。
まず人文系は普通に儲かります。自称「意識の高い」人たちの言い方を借りれば「市場が評価」しています。
世界経済で見ると、文化・クリエイティブ産業の経済規模は約 3.3 兆ドル、3.1 %のシェアを占めます。
これは一次産業(農林水産業)にせまるレベルであり、航空宇宙(約 0.83 兆ドル)・半導体(約 0.52 兆ドル)・医薬品(約 1.57 兆ドル)の合計よりも上回ります。成長率でも、 2020〜23 年の年平均成長率が +6 % 超 と、世界 GDP の実質成長(+2〜3 %)を2倍以上上回ります。
雇用についても、デザイン・翻訳・IP ライセンスなど二次雇用を含めると 就業者 5000 万人超(UNESCO 推計)。観光消費やコンテンツ課金の誘発額まで加えると、実質的には「テックと双璧」の成長エンジンですらあります。
②長期的・制度的効用:遅咲きの知が基幹技術と社会変革を産む
マイケル・ファラデーは、電磁誘導の法則を発見した直後、一般の人々の前でコイルと磁石を使った実験を披露しました。その際、観客から「それは何の役に立つのですか?」と尋ねられた時、
マイケル・ファラデーは、電磁誘導の法則を発見した直後、一般の人々の前でコイルと磁石を使った実験を披露しました。その際、観客から「それは何の役に立つのですか?」と尋ねられた時、
「この現象はまだ発見したばかりで、赤ん坊のようなものです。生まれたばかりの赤ん坊が将来、どのような大人になるか、誰が言い当てることができましょうか」と答えたといいます。
「今はまだ何の役に立つかわからないが、将来どのような発展を遂げるかは誰にも予測できない」という事実は、人文系の学問の一つ書誌学(の一分野である計量書誌学)において予測され、現在ではSleeping Beauties(眠れる森の美女)現象として研究されています。
ある領域が「役立つ」と判明する時点は研究当初から30〜100年以上も遅れることがあること、「覚醒」に必要なきっかけ=Prince(王子)には異分野コミュニティの接続が有効であること、しかもこの現象は、計量書誌学者Price の累積優位理論が予言した通り統計的必然として生じることを分かっています。
Sleeping Beauties(SB)のインパクトは決して無視できるほど小さなものではありません。ときに大きく産業を組み替えるものとなります。例えばグラフェン理論(Wallace 1947)は 56 年の眠りを経て素材革命を牽引しました。
しかしこうした「遅咲きの知」はむしろ人文知にこそ顕著です。
その覚醒は経済・制度・価値体系を同時に揺り動かすもので、短期インパクトを追うだけではこの潜在的レバレッジを捉えきれません。
その覚醒は経済・制度・価値体系を同時に揺り動かすもので、短期インパクトを追うだけではこの潜在的レバレッジを捉えきれません。
たとえば1417年ルネサンス期の書籍収集家ポッジョ・ブラッチョリーニがドイツの修道院で本書の写本を発見したルクレティウス『物の本質について』。この発見が「王子」役となり約1400年の眠りから蘇ったこの古代詩は原子論や無神論的世界観は、近代科学と世俗的価値観の台頭に実質的影響を与えました
彼の原子論的自然観はガリレオやニュートンらによる科学的宇宙観の思想的素地となり、また「迷信ではなく自然法則を信じよ」というメッセージは啓蒙思想家や政策立案者に影響を及ぼしました。
ここまで長い眠りでなくても、人文知にはこうした例が枚挙暇がありません。「学術的“無用”」と見なされた期間が数十〜百年規模のもので、異分野の問題意識が “プリンス” となり覚醒したものに、例えば次のようなものが挙げられます。

③価値‐規範的・存在論的効用:社会の意味生成とリスクガバナンスに不可欠
人文知は単に「役に立つ」のではなく、“役立つ舞台”そのものを組み立て直す装置でもあります。
人文知は単に「役に立つ」のではなく、“役立つ舞台”そのものを組み立て直す装置でもあります。
意味生成・規範設定・存在論的アンカーが欠落すれば、どれほど精密な技術も政策も 根拠なき計算 に堕し、リスク統治は機能不全に陥るでしょう。人文学を削ぐことは、社会がもつ自己修復・自己調整メカニズムを同時に削ぎ落とすことに他なりません。

さて次に「知識の成り立ち」について説明します。
④知識は相互依存的
知識は “孤島” ではなく、互いに結びつきネットワークを成しています。
直接的に「実用」に関与しない知識も、ネットワークを通じて間接的にそれらを支えています。
④知識は相互依存的
知識は “孤島” ではなく、互いに結びつきネットワークを成しています。
直接的に「実用」に関与しない知識も、ネットワークを通じて間接的にそれらを支えています。
これらは観念的にそう考えられるだけでなく、実データからも検討されています。

大規模共著ネットで「芸術・歴史・哲学」は学際クラスタ間を最も橋渡しするノードとして観測され、また遠距離知識を結合する論文ほど被引用が増え破壊的イノベーションになることが分かっています。
そして人文学系カテゴリは“遠距離エッジ”となることが優位に多い。
そして人文学系カテゴリは“遠距離エッジ”となることが優位に多い。
ネットワークは“強いハブ”を失うと全体効率が急落します。
人文学はまさに異分野をつなぐ翻訳ハブ であり、連鎖から外すと知識流通がボトルネック化します。
人文学はまさに異分野をつなぐ翻訳ハブ であり、連鎖から外すと知識流通がボトルネック化します。
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