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アーレントの著作全体がそもそも間違いだらけの代物である。「暴力について」だってそうだ。彼女はフランツ・ファノンを批判しているが、まるっきり論敵を誤読している。ある箇所では「『尊厳ある空腹は奴隷が食べるパンにまさる』というようなファノンの大げさな最悪のレトリック」と書かれている。

しかし、『地に呪われたる者』の当該箇所を見ると、「だからこそいま一度言うならば、『隷属のなかのパンよりは尊厳のなかの飢餓を』などと、空言を繰りかえすことに時を浪費してはならない」と書かれている。ファノンはアーレントが言う所の「大げさな最悪のレトリック」をむしろ批判しているのだ。

これはあくまで一例であって、アーレントはこういった誤読をしょっちゅう犯す人であることを付け加えておきたい。ありがたがるべきではない著作は『エルサレムのアイヒマン』だけではない。彼女の著作全体がありがたがるべきではないのだ。
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